脳の生き延び機能 ・・・ 不完全は情報から最悪の事態を予測し、リスクを回避して生き延びた
今回は、私たち(ヒト)の生き延び機能を説明します。
私たち(ヒト)は、ほんの些細な物音やちらりと見える情報からでも、敵に遭遇する最悪の事態を予測し、すぐに逃げる能力で生き延びてきました。
*** 脳の機能モデル 変化に対応して生き延びる情報処理機能
動物は生き延びるために、敵にやられず安全を確保する能力、エネルギーをとるために,エサをとる能力をいろいろなやり方で向上させてきました。
身体の筋肉の能力を向上させて強くなることで、すばやい身体運動、力強い身体運動で、敵から逃げそしてエサをとる戦略があります。
私たち(ヒト)は、この身体の能力が高くなかったので、かわりに脳の情報処理能力を向上させて、生き延びてきました。
私たち(ヒト)の脳の機能をモデル化した図を下記の上半分に示します。
脳は環境に適応して生き残るために、下記のプロセスを行っています。
①身体感覚を入力 (五感などをフル活用)
②この入力から、記憶を活用して未来を予測、生き残る行動を判断
③身体運動の指示
④身体運動の結果をフィードバック
これは、次の予測・判断の入力になります。また記憶を更新しています。
脳はこのフェードバックループをまわし続けて、敵から逃げる、エサを探す、
そして配偶者を探す、生き延び行動を行っています。
*** 脳は不完全な情報から、記憶を活用して予測する
上記の図の下半分の文章を、少し離れて、急いでいつもどおりに読んでみてください。 どうですか、ちゃんと読める自分の能力に驚きませんか?
この能力は、文字が読めるようになったばかりの子供には出来ません。経験による記憶が必要です。 私たち(ヒト)は、記憶を活用して、不完全な情報からすばやく環境を認識しています。これで生き延びるための時間を確保しています、すごい能力です。
*** 脳は不完全な情報から、過敏に危険を認識する
もうひとつ、生き延びるためのすごい能力があります。
それが、失敗しても死なない行動を選ぶ能力です。信頼性工学の用語でフェールセーフ機能といいます。
不完全な情報から、本当は敵ではないのにすばやく敵と判断して逃げてしまう動物は、無駄なエネルギーは使いますが、死なないですね。フェールセーフです。
逆に、本当は敵が近づいているのに安全と判断してしまう動物は、省エネですが、死んでしまう確率が高いです。なので、現在まで生き延びている確率は低くなります。
*** すばらしい機能には副作用もある
私たち(ヒト)は、脳のこのすばらしい2つの能力で、弱肉強食の環境の中で生き延びてきました。しかし、この2つ能力には副作用もあります。
予測機能の主な副作用はこの3点です。
①早とちりしてしまうこともある
②同じものを見ても、人によって体験が違うと認識する事実が異なる
③過去の体験の記憶が邪魔をして環境変化がわかりづらい"
危険を察知する高い能力にも、副作用があります。
①少しでも危険(黒い)な情報があると、全部危険(真っ黒)と判断します。
つまり、グレーは全て真っ黒、最悪の事態と早とちりしてしまいます。
②そして、無駄な行動をし、無駄なエネルギーを使ってしまいます。
*** 自分と周りの人のために行動しよう!
私の経験からも、「物事を良く見ないで悪く悪く感じてしまうこと」があります。周りにもそういう人を見かけます。これは、生き延びるための機能の副作用だったんですね。皆がそういう面を持っているんですね、なんだか安心しました。これは、いわば本能です、治せないですね。
この自分の特性がわかれば対策がうてますね。
なんだか危険を感じたり、いやだな~と感じたとき、緊急性がある場合は本能に任せて逃げましょう。無駄なエネルギーを使うかもしれませんが、死なないですみます。
しかし、時間があるときは、下記をじっくり考えてから行動しましょう。
①ゆっくり注意深くみる。(一文字づつよく見る)
②過去の経験に捉われるていないか、今の環境は過去と違っていないか?
③他の人の意見もちゃんと聞く
④面倒くさがらずに、何%黒いのか観察する。
(誰にでも白い部分・良い部分はあるはず、それを活かせないか考えましょう。)
これが出来ると、間違った行動や無駄な行動をすることが減らせます。
生き延びる確率がもっと上がります。
続く
資料 脳には妙なクセがある 他 、池谷裕二さん ありがとうございます。