「心の病気」発症のプロセス ・・・ 気づかないうちに進む負のスパイラル
今回は、メンタルヘル問題の中心である「心の病気」がどんなプロセスで発症するのか、発症するとどんな症状が起きるのか、をご説明します。
私の経験では、身体の病気も発症してから気がつくことが多いですね。
痛みが続いたり、いつもの行動が出来なくなって、はじめてこれは変だと気がつきます。その時は自分一人では対応できないので、仕事を休んでお医者さんに行くことになります。
お医者さんに病気の原因や自分の仕組みを教えてもらって、「そういえばあの時のあれが原因かな?その後も気づかずに無理をしていたから病気になってしまったんだ!」とはじめてわかります。病気を経験して、その発症プロセスを学べば、2度目からは気をつけるようになります。
メンタルヘルス問題、心の病気もおんなじです。その病気の原因や自分の仕組みを知って病気を予防したり、健康を保つ行動が出来るようになります。
*** 「心の病気」を発症するまでの5つのプロセス
「心の病気」の発症プロセスを下記の図に示します。
プロセス1:「心」は少しでも黒い(悪い)グレーなことを、無意識に真っ黒と認識する特性があります。
私たち(ヒト)は最悪の事態を予測し、行動を即断することで危険を避けて生き延びました。まさに、フェールセーフ機能(失敗しても安全な機能)です。
プロセス2:「心」は未来の悪いことを何度も繰り返し予測し、心が一つのことに捉われて不安感情を増幅させてしまう傾向があります。悪いことが頭に浮かんで、心がいっぱいになってしまう状態です。
プロセス3:不安だと些細なことも気になり、ますます悪く捉え、無意識に身を守るための「緊急防御反応」が頻発します。緊急防御反応が起きると、エネルギーをいつも以上に消費し疲労します。
たとえば、驚きの緊急防御反応では、この後の闘争や逃走の準備のためにこんな反応が無意識に起こります。
血液を普段以上に送り出すので、心臓がどきどきします。
出血を減らすために毛細血管をしめるので、顔面が蒼白になります。
ケガを減らすために身体を硬くするので、筋肉に力が入ります。
緊急対応以外のエネルギー消費を減らすため、胃などへの血流を抑えるので胃が痛くなります。
プロセス4:緊急防御反応は緊張状態です。緊急事態に不利な、睡眠、食事、水を飲む行動などが抑えられ、脳の疲れが回復せず、加えて必要なエネルギーの供給も不足します。
プロセス5:疲労とエネルギー不足で脳の処理能力が落ちると、思考が単純になる、周りが見えなくなる、役割を切り替えられないなど症状が起こります。
つまり「心」が弱くなってしまいます。
*** 気づかないうちに進む負のスパイラル
心が弱くなると、ますますグレーなことを黒(悪いほうに)受け止める傾向が強くなります。すると、ますます未来を心配し不安になります。
些細なことに過敏になり、無意識に身を守る防御反応がさらに多発します。
緊張で眠れなくなり、食事が不規則になり脳の疲労とエネルギーが不足します。
そして、心がますます弱くなっていきます。
この負のスパイラルが、気づかないうちに進んでいきます。
この負のスパイルを切ることができないと、時間とともに心がどんどん弱っていき、ある時点で「心の病気」を発症してしまいます。
*** 自分と周りの人のために行動しよう!
私の体験からも、「私たち(ヒト)の心は物事を悪いほうに考えてやすく、不安を増幅させるてしまう」特性は、わかるような気がしますね。
私たち(ヒト)は不安だと自分を守るために、無意識に気づかないうちに、緊急防御反応が起きて、敵にやられないように身体を緊張させ、緊急時には必要のない睡眠や食事を抑えてしまうんですね。なるほど、弱肉強食の自然の世界で生きるための反応ですね。
現代の会社の世界も、弱肉強食の世界ですね。緊急防御反応の対象となる、私を食べてしまう強い敵はだれなんでしょうね? あの人、この人・・・。
このストレス反応を放っておいて、おんなじ負荷が毎日続けば 確かに病気になりそうですね。そういえば、身体の保険体育は学校で勉強したけど、心の保健体育は勉強していないな。どう対応すれば病気にならないのか、自分のために勉強しよう!"
それと、自分が周りの誰かを食べてしまう敵と思われ続けていないか、心配ですね。
特に部下や子供の反応を継続的に気をつけて見てみます!
続く
「心の病気」の正体 ・・・ 身体の緊急防御反応の同時多発、身体が言うことをきかない!
今回は、「心の病気」とはいったいどんな状態なのか、発症するとどんなことが起きるのか、ご説明します。
*** 「心の病気」の正体は、無意識に身体を守る緊急防御反応の同時多発
私たち(ヒト)には、自分を守るための無意識の緊急防御反応がそなわっています。
通常は短時間の反応です。しかし「心の病気」になってしまうと、この無意識の緊急防御反応が通常とは異なり、頻繁に複数が同時に起きてしまう状態になります。
緊急防御行動の一覧を下記の図に示します。
つまり、身体が固まってしまったり、周りを避けてしまったり、逃げてしまったり、
相手を攻めてしまったり、引きこもってしまったりすることが、「無意識」に起こります。それも頻繁に、時には複数が同時に起きてしまいます。
こうなると、今までに経験したことない混乱した状況になります。自分の身体が心では制御できない状況が起き、通常の行動はとれなくなってしまいます。「どうなっているんだ、自分の身体が言うことをきかない、分けがわからない!」とパニックになってしまいます。
*** 「心の病気」への対応
自分の「心の病気」を、病気になった「自分の心」だけで治すのは難しいことです。
専門医の助けを借りて治す必要があります。「心の病気」に関する知識があれば、より早く専門家にSOS発信をすることがことができます。パニックにならずにすむかも知れません。"
しかし、自分や周りに知っている人がいないと、よくわからない状況として、結果的に放置されたり、間違った対応をしてしまったり」します。時間とともに、負のスパイラルでますます心が弱ってしまいます。症状が悪化してしまう可能性も考えられます。"
*** 自分と周りの人のために行動しよう!
私の体験からも、自分の身体や心に何が起きているのかわからず、パニックを起こしてしまうことはよく理解できます。パニックは不安を増幅して、ますます心を弱くしてしまうんですね。
自分も含めて周りの人にこの状況を目撃したら、緊急事態です。すぐ安全な場所に移して、専門家や家族に知らせましょう。
続く
資料 うつからの脱出 、下園壮太さん ありがとうございます。
「心の病気」予防の方法 ・・・ 負のプロセスを切る方法
今回は、「心の病気」の予防方法、つまり発症にいたる負のスパイラルを切る方法について考えてみます。
「心の病気」の発症プロセスを下記の図に示します。(再掲)
「心の病気」を予防するには、この負のスパイラルを切る対策が必要です。
その方法を見付けるために、各プロセスがおきる私たち(ヒト)の仕組みを調べ、
対策を考える必要があります。
*** プロセス毎の予防策の考え方
プロセス1は、”「心」は少しでも黒い(悪い)グレーなことを、無意識に真っ黒と認識する特性あり”です。
「無意識」が間違っても死なないように悪いほうに認識する特性、これを変えるのは簡単ではなさそうです。
場数を踏んで、この程度のことでは大丈夫という経験をたくさんすれば、悪さの程度(グレーの度合い)を正しく認識できるような気がします。
プロセス2は、”「心」は未来の悪いことを何度も繰り返し予測し、一つのことに捉われて不安感情を増幅させてしまう傾向あり”です。
こんな経験、私もあります。意識できることなので対策で出来そうな気がします。悪いことを考える時間をなくすため、別の楽しいことをするとか、運動するとか効きそうですね。
プロセス3は、”不安だと些細なことも気になり、無意識に身を守るための「防御反応」が頻発する”です。
不安をやわらげることが対策だと思います。誰かに相談して、大丈夫と言ってもらうといいかもしれませんね。 また、おんなじような体験をした人の話を聞いて「自分だけではないんだ、仲間がいるんだ」と思うことも効きます。
プロセス4は、”緊急防御反応は緊急事態に不要な睡眠、食事などを抑えるため、疲労が回復せず、エネルギーも不足する傾向あり”です。
たしかに、緊張すると眠れなくなります。仕事が気になってなかなか寝付けなくなります。こんなときは緊張を解くために、好きな音楽をかけるとか、アロマとか効きそうですね。
心身のエネルギー不足にならないためには、良質な食事は必須ですね。身体が受け付けなくても、スマホの充電だと思って必ず規則的に食べる必要があります。
ちなみに、脳の電池(肝臓のグリコーゲン)は、12時間で切れるそうです。夜7時に夕食を食べたら、朝7時には充電が切れます。朝食抜きは電池切れ状態です。
プロセス5は、”疲労とエネルギー不足で脳の処理能力が落ちると、思考が単純になる、周りが見えなくなる、役割を切り替えられないなど、「心」が弱くなってしまう”です。
これは、プロセス4の対策で防ぎましょう!
*** 心の能力向上
日ごろから、思考を単純にしないでよく考える能力、周りを良く見る能力、複数の役割を切り替える能力などを鍛えておくことが有効ですね。
プロセス1のところであげた、場数を踏んでこの程度のことでは大丈夫という経験をたくさんすることも重要です。これらは、心の能力向上と考えることも出来ます。そのためには「心の病気」発症プロセスの体験も役に立ちます。
しっかり対策して「心の病気」にならないようにするとともに、この体験が心の能力を向上させる、役に立つものと考え前向きに対応しましょう。
*** 自分と周りの人のために行動しよう!
睡眠不足が2、3日続いたら、自分がこのプロセスに該当しないか、ちょっと考えてみましょう。周りがみんな悪く見える、いつも悪く思える、気が付くとうまくいっていない仕事のことばかり考えている、上司が敵に見える、食欲がない、など思い当りませんか?気を付けてください。
自分の周りの人で、何か気が付いたら声掛けしてみましょう!
続く